地域福祉をみんなで考えるための「地域福祉計画」
地域福祉計画の策定については、平成30年4月の社会福祉法(昭和26年法律第45号)の一部改正により、任意とされていたものが努力義務とされました。
私が住む大阪市でも福祉の取り組みの中心である区において、区地域福祉計画等を策定し、「ニア・イズ・ベター」(補完性・近接性の原理)の考え方のもと、それぞれの区の特色ある地域福祉の取組みが進められています。
イギリスの地域福祉を見てみよう
日本が参考にしているイギリスの地域福祉は英語では「コミュニティ・ケア」。日本の地域福祉は 戦後半世紀の社会福祉の歴史のなかで登場してきた種々の理念(地域組織化,在宅福祉,住民参加型福祉,利用者主体,等々)を集大成したものが地域福祉です。
イギリスの地域福祉に関する報告書
「コミュニティ・ケア」 と「地域福祉」と違いがあれど、イギリスの「コミュニティ・ケア」を参考にするのは参考になると思います。
年月 | 報告書 | サービス |
---|---|---|
1942年 | ベヴァリッジ報告 | 社会保険及び関連サービス |
1968年 | シーボーム報告 | 地域自治体と対人福祉サービス |
1978年 | ウルフェンデン報告 | 福祉多元主義 |
1982年 | バークレイ報告 | コミュニティソーシャルワーク |
1988年 | グリフィス報告 | コミュニティケア:行動のための指針 |
ベヴァリッジ報告
1942年に発表されたイギリスの社会保障制度に関する報告書。報告書をとりまとめたのは、経済学者ウィリアム・ヘンリー・ベバリッジ。貧困の解消に着目して,基本的な社会生活を充足させるための社会保険と,緊急事態に対処するための国家扶助を二大テーマに掲げている。社会保険については原則として,均一負担と均一給付の平等主義,最低限の国民生活の保障、全国民を保障の対象とすることがうたわれた。第2次世界大戦後のイギリスにおける「ゆりかごから墓場まで」といわれる社会保障制度の基礎となった。
シーボーム報告
1968年にイギリスにおいてフレデリックシーボームを委員長にした「地方当局並びに関連対人社会サービス委員会」による社会福祉制度の改革を打ち出した報告のことである。
地方自治体においてバラバラに対応していたソーシャルワーク窓口の一括化( 3部局に分かれていたものを一元化)を行い, 地域のニーズに総合的に対応するソーシャルワーカーを配置することなど(ソーシャルワーカーには,ジェネリックな能力を求めた。)を提言したものです。
ウルフェンデン報告
1978年に民間組織(ボランタリー組織)の将来のあり方について検討された報告書。社会サービスの供給システムについて、1.フォーマル部門 2.インフォーマル部門 3.民間営利 4.民間非営利の4つに分け、福祉多元主義を打ち出した。さらに、コミュニティケアを展開するためには各部門の連携が重要であるとして、とりわけインフォーマルネットワークを重視した。
バークレイ報告
1982年にソーシャルワーカーの役割と任務について検討された報告書。コミュニティを基盤としたカウンセリングと社会的ケア計画を統合した実践であるコミュニティソーシャルワークを提唱した。これまで行われてきたカウンセリング中心主義からコミュニティ志向へ移行するためには、一般市民をパートナーとしてみなすことができるかどうか、すなわちソーシャルワーカーの「心のもち方」が重要であると指摘している。
グリフィス報告
1988年にコミュニティケアサービスのあり方について政府の諮問を受けたロイ・グリフィス卿による報告書。コミュニティケア進展の遅れは財政保障の仕組みがないためであるとして、地方自治体がコミュニティケアの財政責任をもつこと、地方自治体ごとにコミュニティケア計画を策定することなどが提案された。
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